日本刀を語る上で、「刃文」は欠かせない存在です。実に数種類もの文様があり、時代・特色・系統が非常によく反映されています。
本来の刃文の美しさは刀に手に取り、光を当てることで確認できるものであり、
直刃と乱れ刃は、まず刃文として大別されます。直線的なものか、それ以外のものか、それが直刃と乱刃の刃文による違いです。しかし、調べていくと刃文の違いから波及して、時代や文化の影響も強く関わっていたことが分かります。
直刃は、刃に沿って直線的に付けられた刃文のことです。焼き幅の大きさで細い方から
があり、基本の4種類とされています。また、奈良時代より以前に作られた刀から、今日まで続く最も基本的な刃文です。
それに対して、乱刃は上記以外のものが対象となる為、必然的に種類が多く、各時代・刀匠や流派の影響を受けたことによって、直刃と異なり多くのバリエーションに富んでいることが特徴といえます。
種類の豊富さに伴い、乱刃には時代を象徴する刃文がいつくかあることも、直刃との違いといえます。「濤乱刃(とうらんば)」と呼ばれる刃文は、江戸時代に活躍した「津田越前守助広」が生みの親です。
その刃文の見事な表現力は全国に伝わり、後世まで影響を及ぼしたといわれています。また、この刃文は波を表していますが、自然の風景を取り込んだものは多く、桜や富士山、霧や雪など見る者の想像力を掻き立てる美しさが密やかに織り込まれているのです。
直刃と乱れ刃、違いは明白でしたが、決してどちらが優れているというものではありません。両方を見比べ、刃文に込められた想いを愛でることにより日本刀を深く味わうことができ、自分のお気に入りを探すのも楽しみの一つです。