日本刀は堅牢性と斬れ味を併せ持つ必要があります。全く刃が立たなかったりすぐに折れたり曲がったりしてしまっては困りますよね。その為、刀身の材質となる鋼の製法・選定は非常に重視されます。
刀身の材質
日本刀制作の後半戦です。STEP3では、刀剣の頑強さや斬れ味を大幅に左右する「焼き入れ」という超重要な工程を解説します。
重要工程「焼き入れ」の準備として「土置き」を行ないます。土置きとは平地用、刃文用、鎬地用の3種の「焼場土(やきばつち)」呼ばれる粘土を刀身に盛る作業のことです。盛る順番は一般的に平地用⇒刃文用⇒鎬地用とし、刃側には薄く、棟側には厚く盛るのがポイントです。
焼き入れとは刀身を加熱し、その後急激に冷やす工程です。鋼の温度を光加減を見て把握しなければいけないので、夜間もしくは照明を暗くした環境で行う必要があります。土置きした刀身を火床にいれ約800度で加熱します。
焼き入れは加熱の温度が最も重要なので、最適な温度になった時の色の変化を見逃さず、湯舟と呼ばれる水(10度〜30度程度)の入った水槽に沈め急冷する必要があります。温度が高すぎると刃切れが起こり、低すぎると焼きが入らないので、どちらでもない絶妙なタイミングが求められます。
日本刀特有の「反り」というのは、焼場土を薄く盛った棟側が、急冷後すぐに硬くならず、ゆっくり縮んでいくことで、自然に生じるものです。また焼き入れにより、刃の表面に「マルテンサイト」と呼ばれる硬い組織が現れ、これがいわゆる刃文となります。刃文はマルテンサイトの表出方法※によって以下のように区別されます。
※マルテンサイトの分類
合い取りとは焼き戻しの工程のことです。刀身を火から離してゆっくりと150度程度に加熱します。これを行うことで、焼き入れにより組成変化した鋼を安定させ、腰が強くなり刃こぼれなどを防ぎます。また焼き入れで生じた反りは横方向にも生じるので、台の上で小槌で叩き直線に整えます。